Sun, 17 Sep 2006

マサルさんの日(2)




シロママ談
「マサルさんは、向こうの住宅地出身です。どこでどう生まれたかなんてさっぱりわからない。おかあさんとはあっという間に離ればなれ。兄妹もいたのかどうか知らない。ちいさい頃から物陰で雨を凌ぎ風を凌ぎして・・一人で生きました。
お腹が空くとゴミ捨て場を漁ったり、ネズミを追いかけたり。「忍びのエサヤリさん」というのがごはんを撒いていくポイントがあると仲間から聞き、情報を頼りに、町内を巡回していました。でも、どこでごはんを待っていても、姿を見ると追い払う人がいるから、落ち着いて暮らせた試しがないと言ってました。必死で逃げないと殺されそうだったのです。あんまりあちらこちらで人間にひどい目にあったので、絶対近寄らないのだそうです。河原の緑地にはいつ頃たどり着いたのか、マサルさんとはここのエサ場で会いました。人間を信じるなと教わりました。
一箇所に留まらないのがマサルさんです。緑地のはずれからはずれまで、しょっちゅう居場所を換えて彷徨っていました。
珍しく原っぱに留まり、竹薮で毎日ごはんを食べていた頃は、かなり疲れていたのかも知れません。何も言わないから誰も知らない。喧嘩もしなくなり、穏やかに毎日をウツラウツラと過ごし、人間に出くわしそうなときだけ身を隠しながら、みんなのそばにおりました。もう私の顔を見ても話すことなど無いらしく、私も言いたいことなんかありません。黙って少しだけ互いの顔を見ては、そっと離れて行きました。やあ、どうだい、も言わないから、こちらからも、どうなの?と尋ねません。
一年前の今日、静かに終わりました。
一ちゃんとクロボスと、血の気の多い頃騒いだ友達が戻り、そばで見ていたのだそうです。見てやるものかと思っていた私でしたが、実はみんなと一緒にそっと見ていました。マサルさんほど立派な猫はいませんもの。」

「・・・私、思うんですけどね、
彼がもう少しいてくれたらきっと
、、つまり、

人間はろくなもんじゃない
私たちをひどい目に遭わすから、って
ずっと思っていたのを最近ちょっと忘れているの。
おいしいごはんにあたたかい寝床、
和解するには十分な材料だと思わないかって

今だったら言えたのに」

「言ってあげられたのに」


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