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Tue, 15 Oct 2002

天使


イタリアの小さな大女優ジュリエッタ(フェデリコ・フェリーニの奥さん)が、アンソニークインという大男演じる大道芸人と旅をする映画で、忘れられないシーンがある。自分は何の役にも立っていないと泣く彼女に、道ばたの石ころだって役に立っているんだよ、と、綱渡りの芸人に慰められところだ。男に置き去りにされ、雪の山道で毛布にくるまって眠るときも、彼女の顔に浮かんでいるかすかな笑み。天使というものがいるのだとしたら、あの映画の中の彼女こそそれだと思えた。
命というものは不思議なもので、どんな惨めな境遇でも輝くのだということを、教わった。

新しい寝箱を河原の猫たちが気に入ってくれたかどうか、今朝はとても楽しみだった。あまり入った形跡が無くて、この楽しみはもう少し寒くなるまで持ち越しだ。

誰がどんな顔でいるかを見届けるのは、忙しく立ち寄る河原で最も重要な仕事だ。シラミにたかられた情けないクロボスの上目遣いも、青っぱなをぷかぷかさせたチーコの催促も、甘えたくてじれているお母さんのいじけ顔も、ご飯さえもらえたらいいのであって、それ以上は気安く寄るなと構えている子の頑なさも、クニクニがいつも頭を振って逃げまどうのも、そう、みな彼らがそれぞれの個を生きている証で、いとおしく面白く得難いものばかり。

「名も無き雑草」だってちゃんと図鑑に立派な学術名をつけられて載っている。河原の子達を記録にとどめるのは、私だけにふられた仕事なのではないかという気がしてきた。

ね、のこちゃん。
ずいぶん大人になってきたね。



河原猫の日記



    
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