17Sep2005 チャンピオンの最期 「友よ・・盟友、、一ちゃん・・やい! いじだろうっ!!」 「だれだいボクをらんぼうに呼ぶのは・・ あれ?マサルさんじゃないか。久しぶりだね、どうしたんだい?」
「俺ぁもうダメだ、ちょっと出てきてつき合えよ」 「だめかい?惜しいな・・だってホラ、もうじき満月なんだよ、 祭りに参加して一踊りしてからにすリャ良いのに。 見事な月夜になるらしいよ。え?祭りはキライ? そうだろうね、キミはいつだって裏街道行く暗い男だからね。」
「一回余分に満月見たところで、偉いのか? 得なことは何にもないサ、俺ぁもう十分だ、とにかくもうダメだ」
「お、クロボスおめぇも来たか、ウレシイな。 おまえらどうだい?」
「いたって快適さ」 「快適さ」
「ぼくらはエサに寝返って毎度美味しいごはんを頂いたけど、 キミは最後まで折れなかったね」 「男の道を貫いたね」
「最後くらいはシャーじゃなくて挨拶しようと思って名前を呼んだんだ。 ・・けど、間違えた」 「なんて言ったの?」 「メシ・・・」 「えー、アイツはメシじゃなくてエサだよ、あはは」 「あはは」 「で、慌ててごはんとミルクをさ、並べてヤンの」 「あはは」 「グゥハハハ」 「一太郎とクロボスと俺と、良く決闘したね」 「したね」
「キミが一番強くてかっこよかったよ、黒白でサ」 「俺は真っ黒だし」 「ボクは薄いし」 「俺一太郎嫉妬してた」 「なんで?」 「そこはかとなく上品な柄じゃねぇの」 「キミ口は悪いけどメリハリあって格好良かったよ、チャンピオンだよ」 「チャンピオンだね、一番長生きだったし」 「彼女もいっぱいいたし子どももいっぱいいたし・・」 「・・一太郎よぉ、ミス河原んとこの黒白坊主、 あれ俺の息子、世話になったな。 ミス河原? あいつにシラミもらってから会ってねえな」 「えーやっぱり! ボクはね、彼女に色々教わったから感謝してるよ、 息子もかわいいよ、仲良く暮らしてあの頃ぁ良かったな・・」 「ノラネコの幸せなんざ儚いものよ、いつだって突然の激変に翻弄される、 ここもいつどうなることか・・」 「そんなこと無いよ、エサの覚悟は固いって評判だよ」 「評判だよ」 「おまえら疑うって事なくてめでたいな」 「めでたいよ」 「ボクも」 「毎日必ず」 「必ず来るよ」 「があはっはっ」 「猫ミルク毎日飲めて幸せだったね」 「美味しかったね、ぼくらみんなミルクは好きだね」 「おかあさんを思い出すからね」 「・・・」 「・・・」 「あ、ちょっと辛くなっただろ?」 「・・あはは」 「笑っちゃうしかねぇな、あはははは」 「順ぐりに挨拶して回ったんだ、ヒゲ一本ずつあげてきた」 「ふぅん、チャンピオンはやることが憎いね」 「キミも随分頑張ったことだし、もういいかもね」 「寒くて暑くてどうにも辛いって? じゃぁ朝までみんなで一緒にいよう、さすってやるよ、どうだい?ラクかい? もう夜が明けるよ、みんな出てきて挨拶したいって並んでいるよ」 「仰々しいのはキライだから散っていろ?」 「来るなー来るなよー、散って普通にしてろー!」
いつもどおりエサが来て、 みんなが食べるのと配膳で行ったり来たりしているのを眺めながら、 マサルさんは細い息で横になっていました。 エサがそういうマサルさんに気がついたのは、 全部終わって竹藪を出る時のこと。 薄く開いた目に朝の光を当て、 律儀にサヨナラを言ってお別れしました。 エサには、 マサルさんにぴったり寄り添っているボクもクロボスも見えません。 あっ と言って、マサルさんをじっと見ていました。 ボクの隣にマサルさんを埋葬したのは、 すぐ後で駆けつけたヒゲオヤジでした。 エサが連絡したようです。 エサとヒゲオヤジは、ボクのそばに と、 自分で場所を決めたマサルさんの遺志を理解しました。 河原のチャンピオン猫、 人間に最後まで抵抗の姿勢を貫いた反骨精神は、 食いながら反抗するんで「メシ」と言い、 耳を食う「エサ」という呼び名を気色悪がって、 ワザと間違えました。 僕たちがみんなで一緒に渡る人を待つ虹の橋は、 どこか遠い所にあるのではなくて、それぞれです。 ボクにはここが虹の橋の原っぱです。
河原一太郎 記
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